幸せの条件
 藤本が姉をなだめて座らせる。

「直之君、弁護士なら分かるよね?」

藤本の言葉に直之が小さく舌打ちした。

「離婚よ!もう顔も見たくない!」

私は、怒鳴る。

「・・・分かりました。離婚してあげます。」

あっさり直之がそう言った。

藤本が離婚届を差し出した。

乱暴にサインをし、捺印をした直之の手から藤本へいき、私の父に渡った。

藤本が静かに客間の障子を開ける。

1度も私を見ず、直之が出ていった。

「さくらちゃん、あっちで休みましょう。」

母が私をゆっくり立ち上がらせ、客間から出ていく。

私と母の姿が見えなくなると父は、ため息をついた。

「反対するべきだったな。」

「無理でしょう。さくらは人一倍、幸せに固執してますから。」

「・・・ゆり、さくらが落ち着いたら話でも聞いてやってくれ。」

「はい。」

父が出ていくのを見送り、姉は、ため息をついた。


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