【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
『おはよーございまーす』
業界では朝でも夜でも挨拶は“おはようございます”らしい。
知らないよ。そんなの。
ハッキリ言って私は夜におはようございますなんて言いたくない。
でも言わなきゃいけない。それがこの世界。
ちなみに今日はバラエティー番組の収録。
ぶっちゃけアイドル。
なんでバラエティー出てんの私。
どんだけ忙しいの私。
アイドルグループなのになんで単品で出されてんの私。
珠璃はデートで亜美奈は撮影だったっけ?…って言っても、もう終わるでしょ?
…一緒に出ろよ。
「ぶっちゃけ仁菜はどうなんですか?」
『はい?』
…やばい、聞いてなかった。
「どんな恋愛したいですか?」
…どんなってどんな?
スタジオには私含め15人の有名人。
今人気の芸人が司会をするトークバラエティ。
『え〜?私は燃えるような…?恋、したいですかねぇ』
にこりと作り笑いを浮かべて誰かのセリフを吐き出した。
なに言ってんだ、私。
恋した事ないじゃん。
…その誰かのセリフを、これ珠璃の常套句だったなぁと、いつも言ってたっけ、と思いだす。
…そこまで他人に依存する恋なんて実際あるのか?
「仁菜ならどんな恋愛も絵になりそうですね」
…だから恋愛した事ないからね。
彼氏いた事ないからね。
『そうですかぁ?そうだといいなぁ』
にっこり笑顔で答えると、司会者は微かに頬を赤らめた。
…バカじゃないの?