【完】白い花束~あなたに魅せられて〜

グリーディー虚構





「ほら」


『………ありがとう』



大河がくれた塩ソフトを受け取り、一口食べれば甘い中にもしょっぱい味が広がる。



まだ梅雨明けしない7月上旬。
それは今私がいる場所ではもう終わっているらしい。



沖縄の国際通り。



じっとり湿気を纏った空気が身体に纏わりつく上に、頭上からは容赦なく日が照りつけてくる。



暑い…



灼熱地獄とは正にこの事なんじゃないだろうか。



すでに大河から受け取った塩ソフトは溶けだしている。



それを慌ててスプーンで掬って口に運ぶ。





何故私がここにいるか?



ただの仕事である。



「おい仁菜!お前撮影前に何食ってんだ」



スタッフと日陰で涼んでいた榎本さんが、つかつかと近寄り私の肩にグッと力を込める。



肩から榎本さんの熱が伝わって、それだけで暑い。



『塩ソフトである』


「あ?んだそのふざけた喋り方」


『…………、』


「まーまー榎本さん、落ち着きましょうよー」



私の手元から塩ソフトをふんだくった榎本さんは、それをそのままゴミ箱へとINした。



…ひどい。
せっかく大河が買ってくれたのに。


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