【完】白い花束~あなたに魅せられて〜


高速をいつの間に出たのかここは、奴が経営する店の近くだった。



「店どの辺り?」



信号待ちでこちらに向いて私の身体を揺さぶっていた翔に



『…その信号右に曲がったら駐車場がある』



一つ先にある信号を指差して教えた。



「了解」







それから僅か数分で辿り着いた涼経営の会員制のレストランバーBOTCH。



目の前にあるお店を前に固まる彼。
こんな周りにお店なんてない裏地に、ひっそりと佇むここに訝しげな視線を向けている。



『…大丈夫だって。ここ会員制だし、業界人しかいないよ』



そう告げれば少し安心したのかお店に入ってくれた。



店内に入ればまず目に付くフロア。
そこに立つ店員に



『…久しぶり。コッチは紹介客だけど大丈夫…だよね?』



NOと言わないとわかっているけれど、確認する。



「あ、ハイ仁菜さんの紹介なら大丈夫です。こちらに…」



事務的な処理を終えて翔がカードを受け取ったのを確認して更に奥にあるドアを開ける。



「おっ、仁、菜…」



バーカウンターで食器を拭き上げていた涼は、私に気付くと声を掛けてくれたけれど、後に続いた翔を見て言葉を詰まらせた。


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