いつもと違う日
子供
光を遮っていた
暗いエントランスとは
打って変わって、
日当たりの良い廊下は
乱反射した光が
容赦なく瞳孔の中へと
飛び込んできます。

もはや光が眩しいとか、
セミが煩いとか、
熱気が暑いなんて度合いを
遥かに越えて、
眼や耳の奥、皮膚の表面に
危険を感じるほどの
強い刺激がありました。

私は家の玄関まで
走り抜けてしまおうと
エレベーターの前から
駆け出したのですが、
廊下を曲がったところで
小さな子供と
ぶつかりそうになって、
勢いのついた脚を
おもいっきり
急停止させました。

そして、そのまま子供を避けて
再び走り出すつもりだったのですが、
改めて飛び込んできた奇妙な光景に
私は思わず
そこに立ち止まってしまったのです。

どこのマンションにでも
あることなのでしょうか。

廊下で小さな子供たちが、
楽しそうに遊ぶ光景。

鬼ごっこをしたり、
かくれんぼをしたりと、
マンションに響き渡る
笑い声や騒ぎ声が、
時に煩わしかったり
微笑ましかったり。

ただし、今日はやはり
いつもとは違う日なのでした。

私の足元には小さな女の子が
こちらに背を向けて、
うつむき加減に立っているのです。

そして、その視線の先、
女の子の足元には
その子の弟らしい男の子が
うつ伏せになって倒れていました。


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