いつもと違う日
判明
そんな疑問を抱きつつ、
自分も部屋に
戻ろうとしたそのとき、
誰かが玄関の前まで来て
チャイムを鳴らしました。

もう不穏な気配はありません。

誰が来たのか
確認もしないで扉を開けると、
そこにはエントランスにいた
管理人のおばさんが
立っていました。

「あ、さっきは
すみませんでした。
何か用が
あったんじゃないですか」

あのときは
汗でベトついていた制服も、
今ではすっかりと冷たくなって、
忘れかけていた喉の渇きも
再び蘇ってきます。

「あのね、これ、
おたくの弟さんの
忘れ物なんだけど・・・・・・」

おばさんはそれだけを告げると、
持っていた大きめの
紙袋を手渡して、
小さく頭を下げるなり、
そそくさとその場を
立ち去っていきました。

突然の訪問に戸惑いながらも、
おばさんの去り際に
一言だけお礼を返したのですが、
足早に遠退く背中に
それが聞こえた様子は
ありませんでした。

弟の忘れ物だというこの紙袋、
いったい何が
入っているのでしょう。

部活の
サッカーボールでしょうか。

しかし、
袋の口から覗く
クシャクシャに詰め込まれた
新聞紙の奥には、
紙やボールなどではない
確かな重みを感じます。

それは袋を傾けるたびに
右へ左へと新聞紙の音をたてて
中を移動しました。

転がるというよりも、
重みのままに端から端へ
落ちるといった感触で、
サッカーボールよりも
少し小さいでしょうか。

じっとりとした嫌な汗が
頬を伝います。

紙袋からは、
無慈悲にも
夏の暑さに蝕まれた、
辛辣な匂いが
立ちこめていました。

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