君とタンポポ
エレベータは最上階の10階へ行ってしまう
何も話さない稀菜に少年は気まずくなり
口を開く。
「まさかあんたが俺の隣人とは
思いもしなかったよ。」
「そうね、私もよ。」
気を使う少年に対し稀菜は
目も向けずそれだけ答えた。
話はそこで途切れ、
また気まずい雰囲気になる。
「……あ~、もういいや面倒だ。」
少年は溜め息をついた。
「あんたに一つ聞きたい事がある。
どうしてあの時何も抵抗しなかった
助けも求めないで?」
稀菜は少年にチラリと目を向けると、
少年はごく真面目に聞いていることが
分かりきっぱり答える。
心配しているようにも見えたので…
「別に、どうでもよかったからよ。」
「どうでもって…!?」
稀菜の言葉に少年は驚く。
「減る物でもないし、あれ以上のこと
何て電車の中で出来るわけもないし。」
少年は言葉を失い、丁度エレベーターが
3階についた。
中には男性が一人いた。
本を片手にこちらをまるで見ていない。
扉が開くとこちらに気づかず
前進してきた。
「うわっ!!」
「うおっ!?」
思った通り男性は少年とぶつかる。