君が落とした青空
「あ――…」
返事をしようと口を開けたけれど、その子の名前を知らないことに気づいて口ごもった。
聞いたことがない訳じゃないけれど…分からなくて。
聞いたことは多分あると思うだけに、また聞くのは失礼すぎる。相手は私の名前を知っているのに。
「どうも…」
なんと言って良いのか分からなくて、少し口ごもった後にぺこりと頭を下げた。
「今日、用事あったんじゃ…?修弥そう言ってたけど、どうしたの?」
頭に小さな小さな痛みを感じる。何だろうコレ。
「いや、今から…」
私の様子に何かを感じたのか、女の子は困ったように笑う。
なんだかイケナイコトをしているみたいな気分になる…別に悪いことではないはずなのに。後ろめたく感じるのは何でだろう。
「修弥呼んで――…」
「あ、や…いいから!!」
背後の修弥の方を振り返る女の子に、慌てて声を出して彼女の腕を掴んだ。
その私に驚いた表情を私に向ける女の子。
本当に、もう。
何だって私はこんなにもバカなんだろう。
こんなにも大げさに引き留めなくてもいいのに…余計に怪しまれるのに…
「よくわからないけど、じゃあ修弥には――…」
そう言って笑って口に人差し指を当てた。