不器用な僕等の唄を

誠を立ち上がらせて、背中に手をつける。

困惑した誠はこっちを振り返る。


でも、違う。

『体は離れても心は離れない』

これは全ての恋人同士に通用する理論じゃないらしい。


「バイバイ。」

そう微笑んだのは、少し余裕を見せたかった。
そして、無理して笑ってるんだと気付いて欲しかった。

あたしは、強がって哀れんで欲しかった。


背中を押した。

誠は…振り返らないで、立ち止まる。

最後の最後までそんな事をするんだから、相当好きだった。

あたしは、誠の背中を見てばかりいる。



< 107 / 310 >

この作品をシェア

pagetop