不器用な僕等の唄を

「失礼します。」

バンドの一員なのに、私はわざわざ音楽室の扉をノックする。

…あんなシーンもう二度と見たくないから。


第3音楽室には、人がいた。

部長と先輩。

真っ黒い大きな机には、ちゃんと肘掛けのついた黒い回転椅子が備わっている。

本来、その席には部長が座るはずだけれども…。

キーボードと作詞担当、二年の音宮(オトミヤ)先輩が突っ伏して寝ている。

横から見えるその顔は、白くて睫が長くてとても綺麗。

白雪姫が彼女なら、きっと誰もが王子になりたがるだろう。



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