【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−
「なんで笑ってんの?ここは、感動したり、それどういう意味って疑問に思うとこじゃない?」


「いや……まあ、そうなんだけど。なんか、昔も今も変わらないなって思って」


私の言葉に目をぱちぱちさせるナツを見ていると、クスクス笑いが止まらなくなってしまった。


次第に、ナツも円い音を喉仏から出して、やわっこく笑い始める。


「……ま、いっか。冬花が笑ってくれている。俺はそれだけで十分だ。俺は冬花が笑ってくれるだけで幸せになれちゃう、単純な男なんだから」


「うん。私も同じ、かな」


ナツはキラキラとしたとびきりの笑顔を向けると、私の体をギュッと抱きしめた。


五年分のその想いを全部私に伝えるように、ギュッと。
< 167 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop