想い、果てるまで


「何すんだよ!!」


「次はあなたの番ですよーと。後ろ詰まってるから早くしてくんない?」


「何!?こんにゃろ!!」


そいつはブツブツと文句を言い終えた後、自分の自己紹介を渋々始めた。



「紫波明です。趣味はありません。特技もありません…ってか大体の事は何でも出来ます。でも宿題は写しに来ないで下さい。めんどくさいので」


それだけ言うと、ペコッと頭を下げ席に着く。


周りは一瞬沈黙になったと思うと、みんな一斉に笑い出した。



本人はというと、一体みんなが何で笑っているのか分からないといった表情を浮かべている。



――凄い……



自己紹介でこんな濃い内容を話した人を始めて見たし、その上こんなにクラスを笑わせる人なんて見たことなかった。



きっと中学でもみんなから好かれてクラスの中心だったんだろうな……。



頭が良くて、顔も良くて、人望もあって、ますます気に食わない。




私が鋭い視線で睨んでいると、それに気付いたのかこちらを見てきた。



そして、左足に衝撃が走る。



「痛っ!」



――やられた!



てか普通女の子の足思いっ切り踏むか!?


「へへっ。仕返し」




………まあその笑顔にキュンと来たのは認めるとしよう。





「よろしくな」








うん。今思うと、この時既に私は恋に落ちていたんだと思うね。



「……よろしく」





それに気付くのは、後ちょっと先の話だけど。





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