【僕らの撃退大作戦】


──しかし、おかしいんだよな。


タジマは弁当屋の女性を見て、昼食のことを思い返していた。


タジマにとって、弁当を購入して食べることはかなり珍しい。


それというのももちろん、愛妻弁当を日々持参しているからなのだが、今日はそのことがタジマを悩ませていた。


小遣いと相談すると、頻繁に外食をとるわけにいかないということはさておき。


実は、今日も、愛妻弁当は持参した筈なのだ。


歳のせいか多少忘れっぽくはなっているものの、まだまだそれを忘れてしまう程ではない。


いや実際は一度忘れかけたのだが、気付いた妻に玄関でしっかり持たされたので、間違いない。


それに、昼の休憩に二階へ上がり、ロッカーからそれを出して休憩室へ入ったところまでは、確かに手元にあった。


しかし繁忙になった営業室から呼び出され、その弁当を開ける間もなく、階下に下りた。


そして忙しさが一段落し、再び休憩室へ行ったときには、テーブルの上から忽然と消え失せていたのである。


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