【僕らの撃退大作戦】

ユリカの場合


────────…


少し遡り、タジマがシャッターを閉めるのを、ユリカが目の端に捉えていた時間。


ロビーにはひとりの両替客のほか、客はいなかった。


来ていたのは、ちょくちょく両替に訪れる、向かいの弁当屋の女性である。


ユリカは一人暮らしで自炊していたため、めったに世話になることはなかったが、

窓口係ということで、接客にあたる機会はあったため、顔見知り程度には知っていた。


しかし──。

ユリカは合点のいかない顔で、ちらちらと女性を伺っていた。


ユリカは女性から両替のために現金を預かると、伝票と合致するかを慣れた手つきで数え、女性をソファーに促したのだが、

女性が、ユリカの向こう側に真剣な眼差しを向けていることに、少し違和感があった。


女性が何も言わずに座ったのをみると、くるりと後ろを向いて、出納係に現金と伝票の乗ったカルトンを手渡す。


そして彼女が見ていたものが何であったかを探るように、頭は動かさずに目だけで素早く見渡した。


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