【僕らの撃退大作戦】


営業室の奥、それもロビーからみて真正面の一番目立つ位置にあるのは、金庫室だ。


今は開けられているが、扉は物々しく銀光りしていて、ゆうに10センチ以上は厚みがある頑強なもの。


金庫室と営業室を区切るのは、引き戸タイプの鉄格子。


格子と格子の間は、スモークのように黒めいたカバーがぴっちりとはめられ、中は覗けない。


そして金庫室の隣は支店長室だ。


その主であるササキ支店長は、金庫室の手前にある机に座ってしきりに電話を気にしているのが目に止まったけれども、ユリカはそこで両替を渡し終え、ロビーを向いた。


出納係が出納機と呼ばれる機械にて両替をする音を聞きながら、ユリカは視線を自分の机上に落とした。


背後の内勤次長、タジマから為替を持っていないか確認され、いくつかを後方オペレーターにまわす。


ちらりと目に映り込んだのは、支店長室と反対側隣の壁に貼ってある、引き伸ばされた実写の婦警ポスター。


防犯のためのポスターだが、ユリカはそれを見て今日が防犯訓練の日だと思い出した。


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