【僕らの撃退大作戦】
考えつく限りの手をつくしたタカヤは、無意識にぽりぽりと頭をかいた。
顎をひいたくらいにして俯いた男性の表情は、タカヤから見えない。
タカヤが何気なく目をやった窓口のほうでは、ユリカが何やら女性客と話をしているようだった。
女性客は、銀行の向かいにある弁当屋の店員だということは、帰ってきたときからタカヤも気付いていた。
何を言っているのかまでは聞こえてこないが、女性が真剣な面持ちで何かを必死に訴えているのはタカヤにもわかる。
静かに俯いたままの男性と、何か必死に訴えている女性のその思いもよらぬコントラストに、
タカヤは微かに口元が緩んだ。
女性は確か日本語がうまくなかったな、と、以前自分が弁当を買いに行ったときを思い返していた。
支店には勿論社食なんてものはなく、更にタカヤは独身。
平素は、支店経由で契約している弁当が届くのだが、たまに休みのときがあり、そのときは向かいにある弁当屋に時々お世話になっていたので、
女性のことは見知っていた。