ティーン・ザ・ロック


ウンザリするあたしだったけど、兄が彼に放った思いがけない台詞に驚く事となった。


「悠馬…ね。


葉瑠の居場所を作ってくれてありがとな」



「え…?」



てっきり頭ごなしに怒るんだとばかり思っていた。


だけど、その顔はもう穏やかなもので。


さっきまでの騒ぎは何だったのかと呆れるくらいだった。




「贔屓目とか兄だから言えるとか、そう言われたらそうかもしれないけど


コイツはさ、すげぇ良い子なんだよ。


一人で何だってやれるし、人に気をつかう事も出来る。


どんな時だって頑張ってるし、精一杯生きてるって感じがするって言うか…。




とにかくさ、見捨てないで、側に居てやってくれよ…な?」



恥ずかしかった。



今まで言われた事の無い様な誉め言葉ばかりを並べて


あたしの事なんて何とも思って居ないであろう彼に、あたしを任せる、と言っているのも同然の言葉をかけて。



きっと彼も困惑しているだろう。



そう思って隣を見ると、彼は少しだけ、微笑んでいた。



「………僕の方が、逢坂さんに居場所を貰ってます。


彼女が居たからこそ、こうやって知らない人とも普通に会話ができる様になったんです。


……きっと、僕は。



逢坂さんが僕を必要としている以上に、必要としているんじゃないかな…。




だから




僕の方から見捨てるなんて、あり得ません」




まっすぐな瞳で兄を見つめる彼。



その横顔を見つめる間、あたしの胸の鼓動が鳴りやむ事は無かった。




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