ティーン・ザ・ロック




「―――あたしは、自分がどれだけ恵まれていて、幸せな家庭に育ったか…分かっていて分かって無かったの。


いつだって兄は両親の自慢だったし、勿論あたしも兄が大好きだった。


でも…。劣等感だって感じなかったわけじゃない。


優等生で居続ければ両親に誉められるのが分かっていた。必死に勉強だってした。今まで反抗した事だって無い。


でも…結局はいつも兄の方を構っている様に見えたの…。


そんなの、被害妄想だって事、今なら分かる。けど、その時は……。



……お兄ちゃんだって、いっぱい苦しんでたんだよね…?



あたしが養子だって、知ってたんでしょ…?知ってるから、あたしをたててくれてたんでしょ?


自分が不真面目になる事で、あたしの存在を両親にアピールしていた。…違う?」



「…そんな…。俺は別に…」



否定する兄を、首を横に振って制す。



「……うん。お兄ちゃんなら否定すると思ってた…。でも、自分が養子だと気づくまで、そんな事に気付かなかったの。


それに…自分が犠牲になって、あたしをここに置いた理由も…分かった気がするんだ。

最初はそのせいで、お兄ちゃんが養子なんじゃないかって思ったけどね。


…血族とは言え、叔父さんとは関係的に薄いから…。


父の実の子なら、迷わず二人でお世話になってたでしょう?


でも、あたしが養子で、まだ中学生だったせいで…。



“一人で生きていけるとは思えない。でも自分には養っていける程の財力は無い。

叔父さんの好意は嬉しいけど、葉瑠が世話になるなら、俺は身を引くべきだ。


これ以上叔父さん達に迷惑をかけるわけにはいかないから”


…そう思ったんでしょう?」



「葉瑠、お前…」



そんな事を思っていたのか とでも言いたげな目であたしを見つめてくる兄だったけど


あたしには分かる。その瞳の奥が揺れている事を。



当たらずとも遠からず、なのかもしれない。


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