ティーン・ザ・ロック




未だ抱きついたまま叫ぶ恭介さんに、呆れた奥さんが鉄拳をお見舞いして引っぺがしてくれた。


「ごめんねぇ、葉瑠ちゃん。加齢臭臭かったでしょう?」


「あははは…」


「何だとォー!!?俺の匂いは、同じ“カレイ”でも、カレーライスの香りなんだよォ~ん。なんちゃって!!」


「……黙ればいいと思う」



寒過ぎるオヤジギャグに対して、鋭い眼差しで制する奥さんを、勇者だと思った。



「葉瑠ちゃぁ~ん!!奥さんが俺を虐めるよォ~」



「分かったから抱きつかない!!未成年の子に手ェ出したら犯罪だっての!!」




ぎゃあぎゃあと、コントの様な会話を始める二人に


周りは『また恭介が暴れ出したよ』と、苦笑い混じりで見守り始める。


チラリと兄を見ると、火葬場での表情など無く、恭介さん達を見て爆笑しているようだった。


いつもと変わらぬ兄の姿に幾らかホッとした時だった。



「ギャッ!!」


二度目の恭介さんの抱きつき。



「葉瑠ちゃん~」


「えーっと…」



助けを求めて、恭介さんの奥さんを見ると、呆れたように『ごめんね』と口パクするのが見えた。


どうやら、恭介さんが飽きるまでこの状態でいろという意味らしい。



……疲れる。





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