ハルジオン。
朝の靖之とのやり取りを思い起こしていた百合子は、短いため息と共にもう一度携帯を見下ろした。

靖之の着信表示の後に、「翔」からの着信が十件ほど連なっている。

そのすべてに"未読"の文字。

百合子は今度は深々とため息をつき、肩を落とした。

と、その時、

――ブー、ブーッ

マナーモードの携帯が震動し、画面に翔の文字が現れた。

「……ごめんね」

目を閉じ、携帯をバッグに突っ込む。

ブー、ブーッ……

震動は二十回ほど続き、ようやく切れた。

「無理だよ、翔」

百合子は小屋の壁に頭を当て、足早に流れていく雨雲を苦しそうに見上げた。

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