ハルジオン。
「まぁ、奇麗な花束」

「そう?」

「ええ、とても。……どちらへ?」

「内緒。子供じゃないんだ」

「すみません」

「いいよ。気にしないで」

「すみません」

「あはは。いいってば」

「……はい」

使用人は小さくお辞儀をすると、足早に玄関へと消えた。

すぐに灯りがつく。

その後ろ姿を見送りながら、靖之は小さく肩をすくめ、ほのかに薄暗く趣のある廊下を歩き出した。

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