ハルジオン。
いつしか達也は泣いていた。

ボロボロと大粒の涙を流しながら、赤黒く染まった拳を振り上げ、父を殴り続けた。

「たっちゃん!」

泣き叫ぶ百合子の声も耳に入らない。

「お願い止めて!」

百合子の悲鳴に混じって、グシャリと何かが折れる音がした。



高い窓から夕日が差し込んでいた。

カビ臭い埃の匂いと血の匂いだけが、いびつに明るい倉庫の中に満ちていた。

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