ハルジオン。
「和尚さん!」

「やっぱりか。久しいのぉ」

竹箒を手にした住職のシワだらけの顔が近づいてくる。

「ご主人は?」

「確か先週はロスとワシントン、今週はパリだったかな?」

「相変わらずじゃの」

「まるで母子家庭よ」

逸子はふふ、と自嘲気味に笑い、前髪をかき上げた。

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