ハルジオン。
「わりぃ」

達也は洞穴の壁にもたれ掛かり、天井に向かって呟いた。

そのままゴロリと横になる。

――ポッ

洞穴の外の枯葉に水滴が跳ねた。

雨だ。

それも悪くない。

懐かしい土の匂いを嗅ぎながら、達也は瞳を閉じた。

ポツ、ポツと雨を弾く音がする。

靖之の笑い声が、百合子の笑顔が、達也を深い眠りへと誘っていった。

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