剣と日輪
花ざかりの森編大詔
 昭和十六年十二月八日日本軍の真珠湾奇襲により、大東亜(だいとうあ)戦争の火蓋(ひぶた)が切って落された。開戦の詔勅(しょうちょく)をラジオ放送から拝聴(はいちょう)した暮夜(ぼや)公威は、
「大詔」
 と題する詩を詠んだ。詩を書いていく内に公威の頬を悌(てい)涙(るい)が伝った。涙(るい)珠(しゅ)が紙面に落下するままに公威は大和の国の前途を憂(うれ)い、且つ感佩(かんばい)に咽(むせ)んだ。
  
大詔

やすみししわご大(おお)皇(きみ)の
おおみことのり宣(のたま)えりし日
もろ鳥は啼(な)きの音(ね)をやめ
もろ草はそよぐすべなみ
あめつちは涙せきあえず
寂としてこゑだにもなし
朗々とみことのりはも
葦はらのみずほ国原
みなぎれり げにみちみてり
時しも南(みんなみ)の海 言挙(ことあげ)の国の首(こうべ)に、
高照らす日の御子の国 流悌の剣(つるぎ)は落ちぬ
時しも声放たれぬ 敵共(あだどち)のけがしし海ゆ
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