剣と日輪
「私の小説は虚構であるが、反革命宣言に関しては、虚構ではない。あれは私の全責任において書きました。本物です」
 公威の剛胆な物言いに、村上は肯定するばかりであった。
 
「最終計画案」
 なるものの論議が公威、必勝と、山本一佐の間で闘わされたのは十一月二十八日金曜日だった。
 必勝が発起し、楯の会班長会議で纏め上げられた最終計画案の内容は、楯の会と自衛隊有志による挙兵である。公威と必勝は山本一佐とその配下に協力を求めた。
「僕が先頭を切って挙兵し、首相官邸を押さえます」
 必勝に次いで公威がクーデターの概略を述べた。
「私と一佐殿は配下を率いて国会を包囲し、憲法改正を議決させる。新憲法が成ったなら、直ちに自決します。後を一佐殿に頼みたい」
「僕も事が成ったなら、腹を切ります」
「ううむ」
 山本一佐は師弟の迫力に慄(おのの)いた。両腕を組んだままである。
「このままでは、自衛隊が国軍になる日は永遠に来ない。誰かが捨石になって流れを変えねばならんのです」
 二人は自衛官よりも軍人的であった。
 山本一佐は、
(二人の気を殺(そ)がねば)
 と先ず二人の忠魂を嘉尚した。
「自分が民間人ならば、即応するでしょう」
 と恰も同意するかの素振りを見せながらも、
「然しながら」
 と語尾を継いだ。
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