剣と日輪
 必勝は帰省していた。家にいてもする事が無いので、上田家を訪ねた。牧子が居た。必勝は今年で卒業予定である。
「卒業したらどうするの?」
 牧子がビールをコップに注いでやりながら、そう訊くと、必勝は、
「留年や」
 と頭を掻いた。
「成績悪いから、卒業できん」
「まあ、治さんは承知なの?」
 必勝の授業料は、兄治の財布から出ている。
「うん。大晦日に言ったら怒られた。二浪の上に留年するんだったら、これからは自分で授業料と生活費は稼げって言われた」
「おやおや」
 牧子は母親のような口調で、
「そんなに稼げるの?」
 と問うた。
「姉ちゃん知らんなあ」
 茂が口を挟む。
「まさかっちゃんは今羽振りええよ。なんといっても楯の会学生長やからな。活動費が一杯出るのや。なあ?」
「う、うん。自分の生活費と授業料位何とかなる」
 必勝はじろりと茂を睨み付けた。
「余計な事言うな」
 と言いたそうだった。
「そう」
 牧子は納得したようだ。
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