剣と日輪
「はい。すいません」
 公威はじれったくなってきた。話が五分を過ぎるのだけは、避けねばならない。
(はやいとこ用件を喋らせよう。まさか態態頭を下げにきたんじゃあるまい)
「文学の話?」
 水を向けてやった。
「いえ」
 少年は全否定した。
「じゃ何かね」
「以前、御手紙を郵送しました」
「手紙か。手紙は一日に何十と来るからね。写しか何かある?」
「家に置いてきてしまいました」
 メイドが御茶を置いたが、少年は礼を言ったのみだった。焦っている。
「じゃあわかんないなあ」
 公威は少年の間の悪さに、思わず腕時計に目を奪われた。タイムリミット直前である。
「じゃあこうしよう。君の一番したい質問一つだけ言って御覧」
 少年は黙想している。
「ないの?」
 公威が内心、
(勘弁してくれよ)
 とぼやくや、少年は掌を返したように勢いづいた。
「あります!一つどうしても聞きたい事が」
「それを言い給え」
「はい」
 少年は呼吸を忘れている。
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