AVENTURE -君の名前を教えて-
ポーン――……

ふと音がして、私ははっと我に返った。

「まもなく、着陸体制に…」

流れるアナウンスに、リクライニングを元に戻してシートベルトの確認をする。


3年、かぁ…
でも、結局アイツは、私よりあの子を選んだわけで。


一番楽しい時間を過ごしたはずなのに、それも全てが色あせて感じた。
一緒にお祭りに行ったことも、クリスマスを過ごした事も、テスト勉強した事も、レポートを協力して書いたことも。


楽しかったはずなのに。
本当にそれが楽しかったのかが分からなくなってきた。


いつからアイツはあの子に気持ちが移ってたんだろう。
本当は、私が知らなかっただけで、ずっとあの子のことがすきだったのかな。


マイナスの思考はどんどん広がっていき、止まる事がなかった。


駄目だ。
なんかも－、脳みそが全否定始めた。


着陸態勢に入る飛行機の重力。このままつぶれてしまえばいいのにと思いつつ、また、深い溜息をつく。


…あんなやつのこと、とっとと忘れなきゃ。


いつまでもずるずる引きずってるのは、なんだかダサいし、男はあいつだけじゃない。

深呼吸をひとつ。
私はまた、窓の外に広がる海を眺めた。
< 9 / 242 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop