図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
昼休憩。

蓮は売店で買ったパンを囓りながら、図書室の裏庭に足を運ぶ。

コーヒー牛乳をすすりながら木陰に寝ころぶと、見えるその窓には昨日の日本人形はいなかった。


「なーんだ」


少し落胆する自分を不思議に思ったが、どうでもいいことのように思えて、そのまま目を閉じた。


「あ、あのっ」


女の声に蓮は体を起こした。


「何?」


蓮は極上の笑顔で迎える。

こんなところまで蓮を追いかけて、恥ずかしそうに頬を赤らめて・・・。

これから先、彼女が何を言おうとするか蓮は知っているから微笑む。


「篠宮センパイ、あたしとつき合って下さい」


センパイって事は1年生か。

そんなことを思いながら、手招きする。


「こっち、ほら」


その子の手を引っ張り、自分の膝の上に座らせた。


「きゃっ」


近づく顔と顔。


「俺のことスキなんでしょ?」


グロスの付いてない唇ならキスは出来る。

だから軽く口づけると彼女の耳まで赤くなる。

それから、タイを外しボタンに手を掛けて・・・・。


「えっ、あ、あの・・・」


彼女は離れようとして蓮の胸に置いた手を突っ張るように少し力を入れた。

彼女の頭が揺れて、見えるのは図書室の窓。


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