恋がしたくて…
「えっ…?」


思いもよらぬ展開に、目をパチパチさせる私。

しかも、
口は バカみたいに あけたまま…。


「今晩はどう?」

と 言われ、

「急には ちょっとー。」

と 小さく 答えると、

「なら 金曜にするか?」

と言う 佐々木さん。


ドキッ。


また 心臓がなった。


『金曜にするか?』
と言う佐々木さんの声がいつもと違ったから…。


いつもは豪快で。
堂々としているのがウリのような人なのに。

そう言いながら佐々木さんは、頭を私に近付けた。


迷子の子供を心配して見おろすかのような優しい目だった。

そしてその声は、いつもより遥かに小さく。


弱いものを 壊れないように いたわるかのような聞き方だった。


自分が小さな子供ように優しく扱われたせいか、


ごく 自然に


「うんっ。」


とこたえていたアタシ。


「はい」ではなく、

「うん」

と言えた事が うれしかった。


「じゃっ。メールするな。」

と、同僚を追いかけるように廊下に出た佐々木さん。


皆、ベルと同時に、急ぎ足で昼食を 食べに出てしまい、
周りには 人は 居ない。


誰にもバレてない。

あんなに ドキドキしてたのに、
結構 冷静だ。私…。


なにくわぬ顔で トイレによった後
同期と合流する。



佐々木さんは 慣れてるだけだから。

もう期待は しない。

でも リハビリには もってこいの相手だし。

私も そう 割り切ればいいんだ。


そんな風に 考えながらも、同僚を前に
優越感に ひたっている自分がいた。
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