恋がしたくて…
奥様
「そんな事、分からないじゃない?悲しい事、言わないで下さいよ。」
と、私が言うと、
佐々木さんは 続けた。


「女房。お菓子作りが好きでさぁー。
ちょうど、付き合いはじめた頃の話なんだけど、
結婚する前の年の、俺の誕生日にな。
ケーキを作ってくれたんだよ。
こっちは ケーキなんて、好きでもなかったんだけどさ。
一応、普通は、
「美味しい。」
って 言うもんじゃん?
だから、
「うまい。」
って、俺も言ったんだよ。
そうしたらさぁ。
目に涙 浮かべて 喜んでやがるの。
「ありがとうっ。来年からも、毎年 作るね。」
って、
自分がプレゼントをもらったみたいな、スッゲー 嬉しそうな顔して 言うんだよ。

友達に 女房を紹介してもらって知り合ったんだけど、
俺さぁー。
友達の手前、断り辛くて、
まぁ、いっか。
って、軽い気持ちで 付き合いはじめただけだったんだよ。
正直、全然 タイプじゃなくて、参ったな。
と思ったぐらい…。
けど、一人暮らしのサラリーマン生活は 寂しかったし、女房は 夕食 作りに来てくれるって言うから、
そんなのが、嬉しくて 付き合ってただけなんだよ。
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