戦国千恋花
でも、そんな事思える立場じゃ
ないのかも。

実際、どうやって答案を隣に渡したのか
覚えていない。

無意識だった。

だから、すごく
嫌な気持ちだった。

原因がハッキリしないのに、話はどんどん広がる。
きっともう、クラスの全員が
私が並び間違えた
と思っているのだろう。
私すらそう思っていた。
―…みんなの時間を潰させてしまって、
ごめんね。
ごめんなさい。




一日の終わり。
気分は最悪だったけど
なんとか過ごせた。

私は
職員室に、テスト終了後に提出する課題を出しにいった。

そして、真実を知った。
先程の試験監督の先生が話している事を聴いた。
「なんだかあの子、気にくわないんだよね。隙というか、弱みが無くって可愛いげがないし。だからさっきは、気分が良かったよ。覚えのない嫌疑をかけられて、申し訳なさそうにしているあの顔。」

本当は、答案用紙の並びは完璧だった。

私は以前から、この教師の授業方法が嫌いで、
多少の反感を持っていた。

自分にやましい所があることを知っている人間は、
そういった感情に
目敏いほど敏感だ。

つまり
―…まんまと騙されたのだ。

私は更に、嫌な気持ちになった。

それは、騙されたという事実にだけではない。

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