涙の宝器~異空間前編


涼の肩を指でツンツン突く。



……………………。









「ねぇ?
こんな美女を目の前にしといて寝すぎだよん」




我慢の顔が崩れ落ちる。




「り、りょうぉ…
死んでるんでしょ……」




我慢というダムが崩壊し、濁流する涙を止めることはできなかった。




死の涙は、私の顔をぐちゃぐちゃにしていった。



ぐったりとしている涼の顔を両手で掴み軽く上げた。


涼の顔は青ざめていた。



嬉しい顔でも悲しい顔でも幸せな顔でも辛そうな顔でもない。




死んだ顔だった。
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