お伽話をキミに。
「…俺、そっちのけないから」
「俺だってねぇよ」
さり気なく俺から距離を置くように後退りする郁に俺も間髪入れずに否定する。
何わけわかんねぇこと言ってんだよ!
俺だってノーマルだっつーの!!
心外極まりない郁の台詞に辛うじて笑ってはみたものの、俺のこめかみは間違いなくピクピクと引きつってる。
「何でそんな話になるんだよ!!」
格好良いって言っただけだろ!?
「…お前が変なこと言うからだろ」
文句の二つ三つでも言ってやろうと思ったが、無表情のままの郁にそう言われ何か言い返す気に失せて。
俺は納得いかないまま口を閉じた。