お伽話をキミに。
「……何にもしないなら、漫画の主人公みたいにはなれないぞ」
郁の言葉が胸を抉る。
と同時に強く俺を動かした。
諦めるなんて出来るわけないのに。
龍ちゃんにだってそう言い切ったのに。
俺は何してる?
これじゃ否応なしに諦めるしかなくなるじゃん。
「…郁人…」
「………何」
真っすぐ前を見て呼べばゆったりと返ってくる郁の低い声。
「俺、今日中に連絡先聞く。絶対」
決意に嘘はない。
絶対やってみせる。
出来るに決まってるだろ。
今まで王子やるために死ぬほど努力してきたんだ。
今更怖いものなんて何もない。
そう意気込んだ俺の隣で、ふと郁が笑ったのがわかった。