お伽話をキミに。
《中等部の王子様》
キーンコーン カーンコーン....
終業のチャイムが鳴り響くとともに、ある教室から聞こえた複数の甲高い声。
「きゃー!!悠斗く〜ん!またねぇ〜」
「王子〜!また明日ねっ」
教室の出入口の前で甘ったるい声で話し掛けてくる女子たち。
周りに無数のハートが飛んで見えるのは気のせいじゃないはずだ。
そして、そんな彼女たちに笑顔で手を振るのは
「うん。また明日ね」
俺、3年A組・水無月悠斗。
一応、ここ藤宮学園中等部の王子様。
俺が笑う度、女の子たちから上がる黄色い声。
その声にもう一度笑いかければ、漸く満足したのか彼女たちは教室から出ていった。