お伽話をキミに。
パタンとドアが閉まる音がしてから数十秒。
「………………帰った?」
「……帰った」
王子様スマイルを顔に張りつけたまま、俺は横に座っていた親友に声をかける。
授業が終わったと同時に殆どの生徒が出払ったこの教室には、既に俺と俺の親友である無表情男・西園寺郁人(サイオンジ イクト)しかいない。
「ちょっおい、郁!そっちのドア閉めろ!!鍵かけて!!」
けだるそうに机に脚を乗せ週刊少年漫画を読んでいた郁から面倒臭そうに返ってきた返事。
その返事を聞くや、猛ダッシュで教室の前方にあるドアを閉め鍵をかける俺。
郁も重い腰を上げ後ろのドアを閉めてくれる。