お伽話をキミに。
「待って!!」
絶対彼女を見失いたくない。
これっきりにしたくない。
そんな思考が王子キャラとかそういうのを全部俺に忘れさせ、咄嗟に走り去る彼女を呼び止めさせる。
「あ、あの!君の名前は?」
俺の声に立ち止まり振り向いてくれた彼女は、一瞬ポカンと不思議そうな顔をした後、太陽みたいな笑顔を浮かべて
「如月、如月花恋です」
と告げた。
名前を言うなり一礼して走り去った彼女の後ろ姿を見つめる俺。
な、名前まで可愛い…!
きゅんきゅんしている心臓を自分じゃどうすることも出来ず、とにかく郁のところに戻ろうと俺は顔を真っ赤にしながら階段を駆け上がった。