お伽話をキミに。
「サンキュー!郁」
「……お前、面倒だから家で読めよ」
満面の笑みで礼を述べる俺に、郁はあからさまに嫌そうな溜息を吐いて椅子に座りなおした。
「馬鹿言うな!俺は今すぐ読みたいんだよ!何の為に人の目盗んで貴重な休み時間に買ってきたと思ってんだ!!」
…………訂正。
満面の笑みなんかじゃなく俺の顔は確実に、にやけてた。
さっきまでの王子様スマイルは何処へやら。
破顔寸前なくらいニヤニヤしてて到底同一人物とは思えない俺。
うん、自分でもちょっと同じ人間か疑うよ。
もちろん、こんな顔になるのにはちゃんと理由があるわけで。
俺がにやけてしまう理由、それは鞄の中にこっそり入っているある雑誌。