お伽話をキミに。




それでも俺はその台詞を撤回する気にはなれなくて。

龍ちゃんの声を知らん顔してそっぽを向いた。


そしたら聞こえてきたのは、盛大すぎる溜息で。




「……つーかなんだそれ。告る前に失恋でもしたわけか」




八つ当りすんなよ、と付け足された言葉に俺の肩はピクリと震える。


勿論、そんな俺の反応を龍ちゃんが見逃すわけもなく。

へー…とか、ふーん…とか言ってるのが俺の過敏になっている耳に入ってきて。



今の龍ちゃんの顔なんて見なくても言い当てられる。

絶対、絶対確実に意地悪くニヤニヤ笑ってるはずだ。


そう確信して断固顔を上げないつもりでいた俺。




< 98 / 177 >

この作品をシェア

pagetop