Re:
「なあ、キョウちゃんどこ行ったか知ってるか?」

カーテンを開くと同時に声の主は聞いてきた。

とっさに僕は寝たフリをしていた

「………」

「おい」

「…………」

寝てるんだから放っといて

ギュッと頬をつねられた

「お前たぬき寝入りヘタクソ」

「った…!痛い痛いっ!!」

僕は不意打ちの痛みに耐え切れず目を開き

つまむ手を払おうとした

「お、お前この前自転車置き場で寝てたヒョロ男じゃねーか。」

頬をつまむ手を離し僕を見た

「あ……」

昨日スギタ先生に『ナカニシ』って呼ばれた人だ。

というか

確かに僕は細身で小柄だけどヒョロ男って名前じゃないし今まで呼ばれたことない。

「目を力一杯瞑る寝方なんてねーだろーよ。なに?お前もサボり?見かけによらず悪いのか?」
悪戯っぽく笑う

僕はその言葉を否定しようと思いっきり首を横に振る

彼は見てないのか話を続ける

「なあ、キョウちゃん知らね?オレが寝る前はいたんだけど」

彼の言うキョウちゃんってのは多分保健室のキョウツカ先生のことだと思う。

僕はまた首を横に振る

「そーか。どこ行ったんだ?か弱い生徒が二人も寝てるってのに。なあ?」

「………」

僕は黙っていた

学校で話しかけられることがなくなってるから

どうすればいいのか

僕は

『言葉のキャッチボール』

という会話の方法を

忘れてしまったのか

彼からの問いかけに

返す言葉が思い付かず

答えられなくなっていた
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