Re:

チュウ

下のグラウンドから聞こえる声

授業が終わり、グラウンドを後にする生徒の声

次の授業までの休み時間が始まった

校舎内も少し賑やかになってきた

おしゃべりする声や笑い声

全く違う世界に感じるほど遠くから聞こえて

屋上にいる僕らは

ただ

向かい合う

会話のないまま

時間が過ぎていく

チュウと名乗る彼は

何も話さない僕から離れず

僕の向かい側で寝転がる



「教室に…戻らないの…?」

「アツムこそ」

「僕は…」

まだ、戻りたくない…

「オレは戻りたくないの」

「眠くて眠くて。昨日は寝るの遅かったからなぁ」

大きなアクビをする

「昨日…」

そういえば、昨日彼は学校を途中で抜け出していた

「そ。」

「……学校、サボってたね」

「んー?ああ、呼び出されたんだ」

「忙しいんだ…」

僕とは大違いだ

「そーでもねーよ?アツムの方が忙しいんじゃねーの?習い事とか、塾とか」

「習い事も…塾も行ったことないよ、僕」

「へー、奇遇だな。オレもだ。んじゃバイトとかは?」

「したこと…ない…」

「ふーん?」

「…チュウはバイトしてるの?」

高校生になってからバイトしてる人は多いし、うちはバイト禁止じゃないからそう珍しくない

「いや、バイトじゃなく家の手伝い。だから金ももらえねぇの。」

「そうなの…?」

「そうなの」

ゆっくりと

僕はチュウの問いかけに小さな声で答えていた

予想のつかない問いかけ

数カ月ぶりに

家族以外の人と会話をしている

昨日と違う今日が始まっている
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