終止符。
「あの…、お手洗い借りてもいいですか?」


私は車を降りた時からずっと緊張していたのだ。


「どうぞ」


伯母は紅茶を飲みながら答える。


「…あの、どこにあるんでしょうか?」

「…あなた覚えてないの?」


紅茶を飲んでいた手を止めて、私をじっと見た。


「え?…はい」


ため息をつく伯母。

「嫌ね。あなた5歳の時まで、ここに住んでいたじゃないの」

「え?」


私がここに?

無意識に嫌な記憶を閉じ込めてしまったのか、全く覚えていない。


「…残念ながら記憶にありません」

「やぁね、せっかくいい生活をしていたのに覚えてないなんて」

「…すいません」


なんとなく謝り、家政婦にお手洗いを案内してもらった。


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