Last Sound




「………無理だ」


エトーが黙って約3分。

そしてやっと口を開いたかと思えばこの言葉。



「…なんでだよ!

エトーなら、バンドにかけてたエトーなら俺のキモチ、分かってくれるって信じてたのに…っ!」


エトーだから。

エトーが担任だったから俺は進路希望調査の紙に

『軽音部を作る』

そう書いたんだ。


もしエトーが担任じゃなかったらこんなことは書かなかった。

どうせ、鼻で笑われるだけだって、分かってたから。


でもエトーなら何か、考えてくれるんじゃないか。

エトーなら俺に協力してくれるんじゃないか。


そう思ったから正直に書いたんだ。

それなのにエトー…無理だ、なんてっ!



「分かるよ!分かってるつもりだよ、波瑠斗のキモチは。

だけど、半年でそこまでできるとは俺には到底思えない。」


「…エトーのウソつき」


「あ?なんか言ったか?」


「エトーのウソつき!

エトーがいつも言ってるあの口癖は…!


何事もやってみなくちゃ分からない、

って言葉はなんなんだよ!


なんで…!

なんでやる前からできない、って決めつけんだよ!


エトーも結局、そのへんの教師と同じなんだなっ!

口先だけで、自分じゃそれを実行しようともしない。


少しでも…少しでもエトーはそういうヤツらとは違うって信じた俺がバカみたいだ!!」


ありったけの力で怒鳴る。

だけど、それくらいエトーにムカついた。


それにカッコ悪い話だけど…なぜか泣きそうになって。


俺…マジ、カッコ悪いな。








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