モザイク
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。何、ふたりだけで納得しているんですか。僕にもわかるように説明して下さいよ。」
すると、丹沢と神宮寺は目を合わせ、それから笑った。
「な、何がおかしいんですか?」
「お前はかわいいな。うん、かわいいぞ。」
と丹沢が言えば
「そうだな、かわいいぞ。どれ、俺が絵本を読むように説明してやるか。」
と神宮寺が言った。
「簡単に言えば、モザイクは直接触れているものにしかモザイクが感染しない。と言う事だ。」
「と言う事は?」
桜井はまだ目が泳いでいる。
「さっき丹沢が使った聴診器は、直接でなく、間接的に触れた事になる。つまり感染しない。」
「えっ、本当ですか?」
確固たる裏付けなどない。しかし、桜井を納得させるだけのものだった。その証拠に少し安心したような表情になっていた。きっと、こんな奇怪な患者を押しつけられ、内心ビクビクだったのだろう。
「多分な。」
丹沢のこの言葉は、桜井に届いてはいなかった。
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