モザイク
長老は腕の中で
覚えているだろうか?魂は繋がっていると。

公園に一本の木が生えていた。桜の木だ。この公園にやって来て、もう五十年になるだろうか。この桜の木は、百年前には犬だった。柴犬だ。その犬だった頃の記憶を持ちながら、今、桜として花を咲かせている。だから、犬に小便をひっかけられても怒ったりはしない。自分もそうだったと覚えているからだ。
こうして記憶を持ちながら、次のものへと生まれ変わっていく。これが魂が繋がっていると言う事だ。

カナの腕に抱えられているチロルも、例外ではない。魂は繋がっている。それもチロルは最年長の部類に入る。他の者からは“長老”の名で呼ばれていた。
そんなチロルには誰も意見は言えない。今回の件も同じだ。チロルの意見は絶対だった。

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