モザイク
なれの果て
とりあえず、一通りの出来る診察をしてみた。体に触れるわけにはいかないから、あくまでもその範囲で出来る診察だ。
それもあるのかも知れないが、特にこれと言った手がかりは掴めなかった。
「ありがとう。また別の診察をお願いするかもしれないが・・・その時はよろしくな。」
神宮寺は長沢と佐々木に言った。
「あぁ、かまわないよ。」
佐々木の返事を聞いてから部屋を出た。

「次は丹沢のところだ。」
神宮寺は桜井に言った。
「そうですね、もしかしたら丹沢さんなら、自身で何か気がついているかもしれないですしね。」
桜井の言葉に引っかかるものを感じたが、神宮寺はあえて言わずにおいた。
「丹沢いるか?」
避難させた部屋のドアを開けながら、神宮寺は言った。しかし部屋には丹沢の姿は見当たらない。
「丹沢?」
もう一度言った。やはり同じだ。
「丹沢さん、どこに行ったんでしょうね?」
「わからない。」
桜井の問いに、神宮寺は首を振った。
「しかたない。他の部屋を探そう。」
ふたりは部屋を出た。

ふたりが扉を閉めると、その勢いで風が起きた。その風は床に積もった砂のようなものを拡げていった。

「どうだ、丹沢はいたか?」
「どこにも・・・。本当にどこに行ったんだろう?」
手分けして探したが丹沢の姿を見つけられなかった。
「神宮寺さん、これからどうしますか?」
「どうするって言ってもな。まずは多くの患者を診る事が先決だろう。丹沢は後回しにしよう。」
「ですね。丹沢さんなら何かわかったかもしれないけど・・・しょうがないですよね・・・。」
桜井は言った。
「あぁ、そうだな。」
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