赤い糸



…――私の前にも彼には、2人くらい家庭教師がいたらしい。





1人は、男の先生。





彼は、大学卒業するとかで、家庭教師のバイトが出来なくなり辞めたらしい。





で、もう1人は女の先生。





この人は良く分からない。





家庭教師の会社に行った時に聞いた、噂によると“生徒に手を出した"って聞いたことがある。





勿論、バレたら首問題。





家庭教師だからって、そう甘くない。





結構、私のバイト先でも先生同志や社員なんかの恋バナを良く聞くが、生徒と先生の所謂“禁断愛"はタブーで、見つかれば即刻、クビになる。





何でも社長の教訓で『家庭教師とその生徒もとい家庭との“信頼関係"で我が社はなっている』とか。





イマイチ分からない教訓を掲げる社長に変わり、まぁ、社会人ならそうなのかも…とか教師と生徒はどこもそうなのか…とか色々と考えてしまう。





隣にいる彼を見れば苦笑いをしながら――…



「俺って有り得ないでしょ?」



なんて話す。





表情は笑っているけど、気持ちのこもってない笑顔。





この子は、今までどれだけ辛い想いをしてきたのだろう?





この“笑顔"を作らせてしまった女の子はどんな想いで彼と付き合ってたのかな?





今、どんな風にどんな想いで暮らしているのか考えてしまう。





彼が傷ついた分だけ、誰かを傷つけたのだと思うと涙が溢れてくる。





きっと彼を好きになった人間は、彼以上に傷ついてしまったのかも知れない…。





“カラダ"だけの関係。





それだけで良いなんて思える女の子は極一部。





好きな人だからもっと一緒にいたい――…





好きな人にカラダを許したらきっとその先の関係も期待するはずなんだよ。





私だけはあなたの“特別"になれるって…。





それなのに――…






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