紳士的なLady
チラリと後ろを見ると、まだ架月は私の後ろの机でぼんやりと窓の外を見ている。
そんな事してないでさっさと帰れ!
じゃないと私が困る!!
私が架月に「帰れ帰れ……」と思っているのにも関わらず、架月はまだ帰らない。
もういい。
彼が帰るまで大人しくしていよう。
彼が帰るのを待ちながら、鞄が取れずに帰れないのを気づかれないように、わざとらしく筆箱とノートを取り出して、自分の席に着く。
私の席が彼の後ろだったら良かったのに……!
1ヶ月前の席替えの時には、気にしていなかったはずの事が、今更になって気になりだす。
「帰らねーの?」
私の方をくるりと向いて、そう聞いてくる架月。
さっき、「鞄取りに来ただけ」と答えてしまった私は、必死で何か言い訳を考える。
「うん。ちょっとやらなきゃいけない事思い出しただけ」
「鞄が取れないからアンタが帰るまでここで待ってるの」なんて馬鹿な事、絶対に言いたくない。
気づかれても恥ずかしいし、情けない。
「ふぅん」
小さくそう言った彼は、何を思ったのか突然、席から立ち上がる。